10年程前のある夏の日の出来事。職業の後輩が息を切らしながら私の自宅に来た。
時刻は夜中の3時。
「先輩!助けてください。」
そう彼は私に言ってきた。
迷惑だと追い返したが、彼は食い下がる。
遂には妻までも起きてきてしまったので、近くのファミレスに彼と行くことにした。
彼……、仮にAと呼ぼう。Aはファミレスの席に着くなり、話を始めた。
それは先程の事だったという。
就寝の準備をし、布団を被り電気を消し、床に就いた。
しかし、その日に限り寝つきが悪い。何かある訳ではないのだが、とにかく寝つきが悪い。
ふと、天井に目をやると何かがふよふよと浮いていた。
真っ暗でかつ、寝ようと目を閉じていたので目の焦点が合わず、じっと『それ』を見つめていた。
段々と焦点が合うようになり、暗闇にも目が慣れてきてようやく『それ』が何なのか分かったという。
それは人間の手だったそう。
しかも『こっちにおいで』と言わんばかりに手招きをしている手だった。
『それ』に気が付き、急いで家から出てきて今に至るという。
私はこういった、世間一般でいう『怪談』や『怖い話』というものが好きだったが、実際に知り合いが体験したという話を聞いたのがこの時初めてであった。
驚き興奮したのを今でも鮮明に覚えている。
この話を聞いてから私の周りで怪異体験をしたという知人の話を聞くようになった。
まるで誘われているかのように……。
私は最初に聞いたこの怪談のタイトルを「闇の誘い」と付けており、このサイトのタイトルにした。
これは初心を忘れないようにという私への戒めであると共に、この話が私の怪異の始まりであるという一種の思い出の為に………。
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